1998年、そう中川Aが 『人生最大のアクシデント』 に見舞われた年、同じ北海道でその出来事はおいらの身に降りかかった。 この年、中川Aはラベンダーが咲く7月、おいらは会社の夏休みである8月にそれぞれ北海道ツーリングの計画を立てていて、それぞれ楽しいツーリングになるはずだっだ。 そこへ中川Aの嫁さんからの突然の電話。 北海道ツーリング中に事故に遭い、中川Aは意識不明の重体。 ここ数日が峠だと戸惑う彼女。 何も出来ないおいら。 病院のベットの上で目を覚まさない中川Aは一体どうなってしまうんだろうか・・・・・。 |
次に電話をもらった時、彼女の声は明るかった。 中川Aが目を覚ましたのだ。 死の淵から這い上がって来やがった。
ただでは死なない奴だという事は分かっていたんだけど。(笑) 何にしてもよかった、よかった。 そしての初の北海道ツーリングに一つ目的が増えた。 中川Aを見舞いに行こう。 バイクで事故に遭った友達にバイクで見舞いに行くというのは、ちょっと不謹慎な気がするけれど、そんな事は構うもんか。 旅の 『ついで』 に絶対見舞いに行ってやるぞ! |
8月、一面のひまわり達が 出迎えてくれる北海道。 |
ライダー達は広大な北海道を ガンガン飛ばして走って行く。 |
でも、もしかして北海道の大地は オレ達を拒んでいるのか!? |
早朝のフェリーで小樽港に着いたおいらは中川Aが入院している留萌の病院を目指してバイクを北に走らせる。 病院に着くと、痛々しそうで一応元気そうな中川Aが居た。 事故の事、事故状況、事故に遭ったけどその時の記憶が一切無い事、警察は一時は助からんだろうと思っていた事、後ろに乗っていた嫁さんが奇跡的に少しの怪我で済んだ事、目を覚ました直後の病院で苦しい生活の事・・・。 淡々と、そして記憶が無い部分は少し他人事の様に語る中川A。 自分がいくら注意してても相手がある事故は完全には防ぐ事は出来ない。 つくづく事故は恐いと思った。 昼過ぎまで中川Aを見舞った後、病院を出る。 そして・・・・ |
緑の広い大地。 | とうもろこし畑にて。 | 北海道はキャンプ場が多い。 |
広いぞ北海道! 景色もいいぞ北海道! 早いぞ北海道! 美味いぞ北海道! 温泉いっぱい北海道! キャンプも出来るぞ北海道! 北海道最高ーーー!! 留萌から初山別、稚内、宗谷、紋別、サロマ湖、網走と、中川Aの事故ポイントを避ける様に、道北から道東へと右回りに走り、初めての北海道ツーリングを堪能。 さて次は・・・ カムイワッカの滝 だ! 「カムイワッカの滝まで10Km程ダートになってますけど、オンロードバイクでも全然大丈夫っすよ。」 屈斜路湖の和琴キャンプ場で一緒だったキャンパーにそう聞いたので、知床半島の道道(北海道なので県道とは呼ばない)からダートへと進入し、カムイワッカの滝を目指す事にした。 これが災難の元になろうとは・・・・・。 |
オンロードバイクで林道に入って行くと 小鹿のバンビちゃんがお出迎え。 |
ここがカムイワッカの滝。 |
愛車のゼルビスでよたよたとダートを走る。 締まったダートだが所々に凸凹があってバイクがガタガタと揺さぶられ、全身マッサージの状態。 「こんなにガタガタ揺られてバイクって大丈夫なんかなぁ?」 オンロードバイクでオフロードを走った事が無かったので多少不安だったが、まあ大丈夫だろう。・・・と考えている目の前に小鹿が出現! こちらをじっと見つめている。 エンジンを切って、こちらもじっと見つめ返す。 奈良公園の鹿とは違って野生の鹿だぁ。 そんなこんなでカムイワッカの滝に無事到着。 バイクを降りてヘルメットを外し、ジーンズの裾をまくり上げ、沢登りを始める。 |
この滝を登った先にあるものは・・・。 | バイクを降りて、滝を登る。 | 滝壷が温泉になっているぞ。 |
ここカムイワッカの滝がなぜ有名なのかと言うと、滝を登った先に何段かの滝壷があって、それが温泉になっているのだ。 自然の滝壷が湯船の温泉、無料、混浴、脱衣場なんか無しで、野趣は満点!! 硫黄泉なので目に入るとちょっと痛いけど、ワイルドな湯やなぁ。 |
小1時間ほど湯に浸かって旅の疲れを取り、バイクに戻る。 そろそろ夕方なので、他の観光客やライダー達も引き上げる準備をしている。 「さて、行くか。」 バイクにキーを差込み、セルを回してエンジンを・・・ 『シュル、シュル』 「あれ?」 『シュル、シュル、シュル』 「エンジンが冷えたからかな?」 『シュル、シュル、シュル、シュル』 「おっかしいなぁ。」 『シュル、シュル、シュル、シュル、シュル』 「何でだ?」 『シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル』 「そっ、そんなはずは。」 『シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、シュル、・・・・・』 「エ、エンジンがかからない!!」 セルモーターは元気よく回るのに、エンジンがかからない。 セルモーターの音だけが虚しく周りに響く。 「ど、どうしよう!?(;_;)」 セルを何回も回していると、近くにいたライダーが来てくれた。 「どうかしましたか? あんまりセルを回すとバッテリーが上がりますよ。」 「エンジンがかかんないんですよ。」 「セルは回っているからバッテリーではないですね。 ガソリンはありますか?」 「まだ半分以上あります。 ほら。」 「じゃあプラグを見てみましょうか?」 わざわざ自分の車載工具からプラグレンチを出して、プラグを外すのを手伝ってくれる。 お互い不便な乗り物に乗っている旅人。 ライダー同士の仲間意識は結構高いのだ。 「プラグがこれだけ濡れているから、ガソリンはちゃんと来てますね。」 「そうですね。 じゃあセル回してみますんで、火花が飛んでいるか確認してもらえますか?」 「あれ? 火花が全然飛んでないですね。 これは電気系統の故障ですよ。」 「そっかぁ、ここまでガタガタの林道を走って来たから、どっかおかしくなったのかなぁ??」 もう日も落ちて段々暗くなって来た。 故障の詳しい原因は分からず、自力で直せそうにも無い。 仕方無いのでバイクは放っておいて、町まで戻ってバイク屋に来てもらう事にしよう。 さっき手伝ってくれたライダーのバイクにはキャンプ道具が山積みになっていて乗れそうもないので、その辺にいた観光客の車を停めて、事情を話して町まで乗せてもらう。 |
何とか町までたどり着いたのは、日が暮れて辺りが真っ暗になった頃だった。 まずは泊まる場所、地図でライダーハウスの場所を探して転がり込む。 ライダーハウスのオーナーに事情を一通り話すと、 「軽トラックで今から取りに行こ。」 「いや、そんなの悪いですよ。 明日バイク屋に頼めばいいです。」 「以前あそこにバイクを置いててイタズラされた事があるから。」 オーナーの言葉に甘えて、軽トラックでバイクを取りに行く。 本当に有り難いなぁ。。。。。 |
バイクを軽トラックに載せ、ライダーハウスに戻り、泊まっている他のライダーにも事情を話すと、あーでもない、こーでもないとバイクの故障原因の探索が始まった。 「エンジンがかからないんですよ。 セルは回るんですけど。」 「バッテリーじゃないのか。」 「プラグかぶってるんじゃないの?」 「ガソリンのチューブが詰まってるとか。」 「ヒューズ飛んでない?」 「配線がどっかで切れちゃったたんだよ。」 「こりゃバイク屋に頼まないと分からないね。」 バイク好きが10人程集まって色々調べたけれども原因は全く分からず、明日の朝バイク屋に電話する事となった。 |
次の朝、雨まで降り出した。 外に出てバイクの所まで行ってみる。 雨に濡れて悲しそうにしている愛車を見た時、こう思った。 『俺の旅は終わったんだ・・・。』 バイクはこの町のバイク屋に預けて列車か飛行機で帰ろう・・・・・。 |
意気消沈しながらライダーハウスのオーナーにバイク屋の電話番号を聞いて電話してみる。 「バイク調子が悪いんで、修理してもらえませんか?」 「どんな症状?」 「エンジンがかからないんですよ。 セルモーターはちゃんと回るんですけど。」 「どこのメーカーのバイク?」 「ホンダのゼルビスっていうバイクなんですけど。」 「キルスイッチが切れてないか確認してみて。」 「えっ、でもセルモータはちゃんと回るんですよ・・・?」 「ホンダのはキルスイッチが切れていてもセル回るんですよ。 他のメーカーのは回らないけど。」 「 ・・・・・ 」 |
ハンドルの右側にある、 赤いボタンがキルスイッチ。 |
ぬわんとヘルメットでこのキルスイッチを 押してしまっていたのだったぁ。(笑) |
普通、バイクのハンドルにはキルスイッチという物が付いている。 エンジンが止まらない状態になった場合などを想定して片手で操作出来る様になっている。 (事故でキーが折れてしまったとか、配線がショートしてしまったとか、故障でエンジンの回転数が異常に上がった時などなど。) |
愛車ゼルビス再起動!! | 北海道ツーリング再開!! |