時は2000年7月、俺(中川A)とT野村は船瀬の地に立っていた。 「今日はサバイバル実験やってみようぜ!」「どないすんの?」「今日は自然から採れたもんしか食べたらアカンってのにしようや。」「大丈夫か?」「釣りで色々釣りながら食べていけばなんとかなるんちゃう?おもしろうそうや。」 と言う安易な気持ちから始まったのであった、「サバイバル実験!」 |
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早速釣りを始める。竿とリールは安物だが、釣ることには差し支えないだろう。えさのゴカイは来る途中に釣具屋で充分買っておいた。 投げの仕掛けは先に針が3つついてる既成の仕掛け。おもりはジェット天秤。狙う相手は「キス」だ。釣ったばかりのキスをさばいて塩焼きにすると最高にうまいのだ。 中川Aの遠投が瀬戸内海の潮の香りに満ちた大気を切り裂く。 この時期は外道としてクサフグが多い。大体7、8割の確立で釣れてしまう。しかしクサフグももちろん猛毒を持っているので食べることは出来ない。いかにクサフグを避けてターゲットであるキスに餌を食わせるかが鍵なのだ。 開始早々、あっという間にキスが釣れた!「おおー!幸先がいい!こりゃ釣りすぎて食べきれんなんてことになったりしてな・・・(笑)」 しかしそんな贅沢な懸念はすぐに打ち砕かれるのであった。キスが釣れた後、なぜだかパッタリと当たりが止まった。 当たりが無くなったわけではなかったのだが、針にかかるのはクサフグばかりで、キスは全く釣れなくなった。 |
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次第に辺りが暗くなってくる。 「全然釣れん・・・」「もう暗くなってきたな。」「うむ。後は釣れたキス食って酒飲みながら釣りを続けるか。釣れたら即さばいて食べるってのもおつなもんやで。」 釣れたキスは網状のびくに入れて石垣に繋げてある。きっと今も生きているだろう。まさに釣りたてのキスって訳だ。 俺はびくに近づいて行き、キスを取り出そうとした。すると・・・ |
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(イメージ画 by.中川A) |
「おのれらあぁっ!!!」 俺は怒りのあまり石垣につまづいて転倒しそうになりながらカニを追い払った。 カニ達は驚いて海中や石垣の隙間に逃げ込む。 「うわあぁ、キス、カニに食われてしもた!」「うわ、完全に骨になっとるがな!」「ちくしょー・・・カニ野郎・・・」「どないしよ?他に食べるもん何も買うて無いんやぞ。」「うぐぐぐ・・・釣るしかない・・・釣らねば酒のつまみは無いんや!」 辺りはすっかり暗くなろうとしていた。しかし釣るしか方法が無いのだ。今からでももちろん買出しに行くことは出来るが、ここであきらめたら男が廃る。オレら流スピリットはそんな生半可なものではないのだ。 |
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(イメージ画像 無断転載 すまぬ・・・) |
その時のオレらの頭の中は想像してたサバイバル実験なんてものから完全に遠ざかっていました。 ・・・いや、これこそサバイバルなのかもしれません。おのれの生存を賭けての他の生物との戦い・・・一瞬頭をよぎったもの、それは・・・ |
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カニに勝たねばこの船瀬では生きてはいけない。そのくらいの根性が無ければ自然から何か食べ物を得ようなんておこがましい限りである。その時中川AとT野村は、人間の奥底に眠っているであろう「野生」の本能を呼び起こし、一個の飢えた野獣と化していたのであった。 そしてそれから1時間後・・・ |
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今になって改めて見てみると俺の誇らしそうなこと!(笑) 「カニに食われんうちにさばいてしもて塩焼きや!」 |
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たった1匹ずつのキスなれど、おのれの全存在を賭けて戦った後に得たキスはこの上なくうまいものであった。 「でも・・・一晩でキス一匹だけなんて少なすぎるよな」「そうやな。でも自然の中で生きていくっちゅうのはそう簡単に出来るもんとちゃうってことなんやな」「そう、カニはこんなこと毎日やっとんや。オレらも見習わなな」 キャンプに来て飢えるなんてことはそうあるもんではない。貴重な体験をし、一回り大きく成長した二人であった。 |
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同じく船瀬キャンプ場・・・「うわああぁぁっ!!キスがまたやられた!」 今度はカニではなかった。 |
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